出番がない時間にも、
あなたの成長は続いている。
試合に出たい。その願いを大切にしながら、次の一歩を一緒につくる。
試合に出たい。その気持ちを、大切にしてほしい。
練習してきたことを、コートで試したい。仲間と一緒に戦いたい。自分のプレーで、チームの力になりたい。出場を望む気持ちには、その子がバスケットボールにかけている思いがあります。
だから私は、出番がなかった日に、すぐ「これもいい経験だよ」と言って終わらせたくありません。悔しさが残っているなら、その気持ちも受け止めたい。そのうえで、次に何を試せるのかを、一緒に考えたいと思っています。
悔しいままでも、チームにいていい。
たとえば、試合が終わり、仲間は勝利を喜んでいる。自分もチームが勝ったことはうれしい。でも、最後まで名前を呼ばれなかったことを思い出すと、うまく笑えない。そんなとき、気持ちを一つに揃える必要はありません。
仲間の活躍を喜ぶことと、自分も出たかったと思うことは、両方あっていい。すぐに気持ちを切り替えられないからといって、チームを大切にしていないと決めつけたくありません。
もちろん、悔しさを理由に、出場した仲間を責めたり、傷つけたりしてよいわけではありません。同じチームで挑戦する仲間への敬意は必要です。悔しさがすぐに消えなくても、自分にできる形で仲間を支えてほしいと思います。
私は、仲間を尊重することを伝えながら、「出たかった」という言葉も聞ける大人でありたい。応援や準備も、チームを支える大切な行動です。その頑張りを認めたうえで、コートで挑戦するために必要なことも、本人と確かめていきたいと思っています。
今日の出場時間と、次に取り組むことを分ける。
試合に出られなかった。その事実は変わりません。けれど、それを「自分には何もできない」「もう伸びない」という結論にまで広げてほしくない。今日の起用は、その日の判断であって、その子のすべてを表すものではないからです。
一方で、「出場時間は気にしなくていい」と言うだけでは、出たいという願いに応えられません。何が足りないのか分からないまま、努力だけを増やしても、本人はどこに向かえばよいのか迷ってしまいます。
そこで、落ち着いて話せるときに、次の練習で自分が変えられることを、一つ決める。私は、そのためにコーチと具体的なプレーを確認する時間が必要だと考えています。
たとえば、コーチから「守備の位置を見直そう」と言われたら、どの場面の、どんな位置なのかを確かめる。次の対人練習でその動きを試し、練習後に見てもらう。「できたか、できなかったか」だけでなく、どこではできて、どこで遅れたのかを話す。そうすれば、次に取り組むことも具体的になります。
この一歩で、次の試合に出られると約束はできません。それでも、出場の結果だけを待つ日々から、自分で試し、確かめられる時間をつくることはできます。悔しさが消えてから始めなくてもいい。出たいという気持ちを持ったまま、一つに取り組んでよいのです。
機会をつくり、変化を見る。そこまでが指導です。
ここで、子どもにだけ「自分から聞こう」「もっと努力しよう」と求めてはいけないと思います。何を見て起用を判断したのか。今、その子に何を期待しているのか。それを説明するのは、指導者の責任です。子どもが質問しなかったことを、説明しない理由にはできません。
試合の状況やチームの方針も含め、本人が理解できる言葉で伝える。すぐに納得できないことがあっても、どこが分からないのかを聞く。選ばれた仲間を比べる対象にするより、その子自身のプレーをもとに話したいと思います。
そして、課題を伝えたなら、練習の中に試せる機会をつくる。実際に見て、できるようになったことと、次に必要なことを返す。いつ見直すのかも共有する。課題を渡して終わるのではなく、取り組んだあとの変化まで見る。それが、私の大切にしたい指導です。
出場機会についても、曖昧な期待だけを持たせず、どう考えているのかを伝える必要があります。取り組みを見てもらえない、説明がない状態が続くなら、子どもの我慢を褒めて済ませず、大人が環境を見直す。出番のない時間に何が育つかは、本人の姿勢だけで決まるものではありません。
家では、まずその子の頑張りを認めてほしい。
保護者の方には、出場時間を尋ねる前に、見ていた頑張りを褒めてほしいと思います。たとえば、「練習で取り組んできたこと、知っているよ」「最後まで準備していたね」。結果とは別に、本人が積み重ねてきたことを言葉にする。そのうえで、今は話したいのか、少し一人でいたいのかを聞いてほしい。
すぐに原因を探したり、ほかの選手と比べたりすると、本人の言葉を聞く前に、大人の考えが会話を埋めてしまいます。まずは「何がいちばん悔しかった?」「コーチの説明で、分からなかったことはある?」と、子どもが受け取ったことを確かめる。家でプレーの直し方を教えるより、技術についてコーチに確認したいことを整理する手助けをお願いしたいと思います。
本人が話せそうなら、その機会を支える。難しいなら、何を伝えてほしいかを本人と確認し、保護者が相談の場をつくったり、一緒に話を聞いたりしてよい。自分で考える力を育てることは、困っている子どもを一人にすることではありません。本人の思いを置き去りにせず、必要なときに大人が力を貸す。その関係を大切にしたいです。
出番を望みながら、自分の歩みも見失わない。
努力しても、望んだ結果に届かない日はあります。バスケットボールを続ける中でも、その先の生活でも、自分だけでは決められないことに向き合う場面はあるでしょう。
そのとき、相手の判断に合わせて自分の価値まで下げるのではなく、分からないことを確かめ、自分が取り組むことを選び、必要な助けを求められる。私は、スポーツを通じて、そうした力も育てたいと思っています。そのためには、大人も説明し、機会をつくり、子どもの変化を見続けなければなりません。
試合に出たい。その願いを持ち続けていい。今日の悔しさを、今日のうちに前向きな話に変えなくてもいい。
次に試すことを一つ持つ。その一歩を見てもらう。出番がなかった日にも、自分の取り組みを確かめられる時間があるように。私は、その時間を子どもと一緒につくっていきたいと思っています。

